
目次
調査概要
| 調査名称 | 株式会社StartingPoint 従業員研修実施状況調査 |
| 調査内容 | 研修の実施状況の実態を明らかにする 企業規模・役職階層別分析から見る教育格差 |
| 調査対象 | 人事・総務担当者、経営者、および各階層の従業員 (役員・経営者、部長、課長、主任、一般社員を含む) |
| 調査方法 | インターネット会社による定量調査 1,000サンプル |
| 調査時期 | 2026年2月3日―2月5日 |
| 実施主体 | 株式会社StartingPoint |
1. エグゼクティブサマリー
本調査は、日本企業1,000社を対象に、社内研修の実施状況とその実態を定量的に分析したものです。調査の結果、約半数の企業で研修が実施されていない現状が明らかとなった。特に「企業規模」および「対象役職」による教育格差(トレーニング・デバイド)があり、中小企業の一般社員層が最も教育機会から疎外されている構造が浮き彫りとなった。
主要な発見事項:
- 全体の48.7%が「研修は実施していない」と回答、検討中6.5%を合わせると、従業員育成に課題を抱える企業が半数を超える
- 定期的な研修実施率は21.1%、不定期実施は23.7%で、合わせて44.8%が何らかの研修を実施
- 企業規模が大きいほど研修実施率が高く、1,000名以上の企業では45.0%が定期的に実施。一方、100名未満の企業では定期実施率が16.1%に留まり、61.8%が実施していない
- 一般社員の68.6%が研修未実施であり、管理職層との格差が顕著
調査背景と目的
日本企業は従来、長期雇用を前提としたOJT(On-the-Job Training)を人材育成の中心的手法として採用してきました。近年の急速な技術革新や働き方の多様化により、従来の育成手法だけでは対応が困難になりつつあります。体系的なOff-JT(職場外研修)やリスキリングの必要性。企業の人材育成戦略の転換期を迎えています。
特に、Z世代やミレニアム世代の従業員は、企業選定の重要な基準として「成長機会の有無」を重視する傾向が強まっています。優秀な人材の獲得と定着のためには、充実した研修制度や学習環境の整備が不可欠な要素となってきています。
一方で、現場レベルでは「忙しくて研修の時間がない」「予算がない」「効果が見えない」といった理由から、人材育成への投資が後回しにされる傾向も指摘されています。こうした現状を踏まえ、本調査は企業における研修実施の実態を把握し、今後の人材育成施策の検討に資することを目的として実施しました。
全体傾向分析:二極化する人材育成
約半数の企業(48.7%)が研修を実施していない一方で、定期的実施(21.1%)と不定期実施(23.7%)を合わせると44.8%の企業が何らかの形で研修を実施しており、企業による二極化が見られます。また、6.5%の企業が今後の研修導入を検討しており、潜在的な研修ニーズの存在が確認できます。

役職階層別詳細分析:一般社員の放置
役職別に見ると、研修実施状況に顕著な差が現れています。

- 管理職への集中投資:部長・課長クラスの「未実施率」は低く、何らかの形での研修機会がほぼ保証されていることがわかる。これは多くの企業が階層別研修(新任管理職研修など)を制度化しているためと考えられる。
- 一般社員の空洞化:一方で、一般社員層の68.6%が「研修未実施」と回答している。これは現場実務を担う層が、体系的な学びの機会を与えられていない可能性を示唆している。
【リスク】一般社員のスキル停滞
一般社員層への教育投資不足は、現場の生産性向上や品質改善の遅れに直結する。また、キャリア自律が求められる現代において、学習機会の欠如はエンゲージメント低下や若手人材の離職を引き起こす最大の要因となり得る。一方で、転職によるキャリアアップを当たり前とする世代でもある。選び続けられる組織風土が構築できていないと、教育投資を回収できずにさらに、採用コストがかかる悪循環になる可能性もある。
企業規模別詳細分析:中小企業の構造的弱点
従業員規模による分析では、規模が小さくなるほど研修実施率が低下し、未実施率が上昇するきれいな相関関係が見られた。

1,000名以上の企業では定期実施が45.0%に達するのに対し、100名未満の企業ではわずか16.1%に留まる。さらに深刻なのは、100名未満企業の6割以上が研修を全く実施していないという点である。これは、中小企業において人材育成機能が停止している、あるいは現場のOJTのみに依存している現状を表している。
クロス分析と考察
「役職」と「企業規模」の2つの軸を掛け合わせると、日本企業の人材育成における「最弱リンク」が浮かび上がる。すなわち、「中小企業の一般社員」である。
大企業の一般社員はある程度の研修機会を享受できていると推測されるが、中小企業の一般社員は、企業のリソース不足と階層内での優先順位の低さという二重のハンディキャップを背負っている。
また、100名以上999名以下の中小企業規模の定期的な実施は、9.5%から15.6%と1000名以上の企業の実施率よりはるかに下回る。場当たり的な教育になっている可能性も考慮すべき回答結果となった。
次のリーダーが育たないという声が人事担当者や経営者から聞こえてくる。必要に迫られてから場当たり的な教育ではなく、事業戦略から展開する体系的な育成戦略が不可避ではないだろうか。
企業の持続的な成長の源泉は人材にある。企業は人材育成をコストではなく「未来への投資」と再定義し、組織規模や役職にかかわらず、全ての従業員が学び続けられる環境整備が求められています。
