落ち込む必要はナシ!他者からのフィードバックを生かすには?

クライアント プロフィール

田 美智子(でん みちこ)さん

1981年生まれ。北海道出身。新卒で三越に入社後、IT業界へ。飲食にまつわるベンチャー企業を中心に、Webマーケティング、広報・PR、イベント運営、コミュニティマネージャー業務に携わる。現在は、オンラインコーチングコミュニティのFirst Penguinsほか、複数のコミュニティを主宰している。
First Penguinsサイト:https://first-penguins.studio.site/
note:https://note.com/denco

対話から、自分の本当の気持ちを知る

敦子
今回は、コミュニティオーナーの田 美智子さんにご登場いただきます。

私と田さんは、組織開発コンサルティングでのコーチとクライアントとして出会いました。現在、田さんは独立され、PRやコミュニケーション、ヘルスケアなどを活動テーマとした複数のコミュニティを、企画・運営しています。
田さん
よろしくお願いします。敦子さんには、First Penguins(以下、Penguins)というコミュニティを一緒に運営したり、私が主催している他のコミュニティのアドバイザーとしても関わってもらっています。友達かつ、ビジネスパートナーのような関係です。
敦子
普段は「田ちゃん」「あっちゃん」と呼び合う仲ですが、この対談では少しよそゆきでお話しています(笑)。

さっそくですが、初めてコーチングを受けたときのことを覚えていますか。
田さん
はい。3年くらい前かな、当時勤めていた会社の上司から「コーチングを受けてみないか」と声をかけられたんです。コーチングって初めて聞く言葉だったから、まず興味が沸きました。新しいもの好きなんです。

で、「なぜ私に?」と理由を聞くと、「せっかく仕事で成果を出しているのに、日々のコミュニケーションのせいで他の人から適切な評価をされていない。それはもったいないから、自分自身を変えてみないか?」と言われたんですよね。

自分でも、その評価のズレみたいなモヤモヤを感じていたので、「コーチングを受けてみよう!」となりました。
敦子
そうでしたね。まずコーチングでは、達成したいゴールを設計します。

田さんの場合は、「周囲とのコンフリクトを自分で調整できるようになる」がゴールでした。いくつかプログラムを設計し、まずは私との対話を通して、田さんの今までのコミュニケーションを見つめ直すことから始めています。
田さん
初めてのセッションのことは、鮮烈に覚えてます。とにかく敦子さんは、私の話を聞いてくれるし、私にフィットしたフィードバックがうまかった。

すると、「私はちゃんと評価をされたかったんだ」という欲求が分かり、すごく涙が出てきて。今まで、気持ちをごまかしていたことに気づきました。
敦子
そうそう。「評価されたい」の気持ちだって、隠す必要はないんですよ。
田さん
これまでに何度か転職をしていますが、つねに上司からのフィードバックへの物足りなさや違和感があったかもしれません。マネージャーは私のことを理解して、適切なアドバイスをくれるはず!という気持ちがありましたが、実際に受けるフィードバックや評価にはズレがあると感じていました。

でも、敦子さんからのフィードバックは、すんなり入ってきたし、もっと自分が良くなりそうだと感じましたね。
敦子
昨今、上司と部下の1on1を勧めたり、マネージャー研修に傾聴を取り入れている企業が増えていますが、聞く立場の人には継続的なトレーニングが必要です。

そうでないと、せっかくの対話が一方的になったり、「1on1をすること」が目的になりがち。そこは、ぜひプロのコーチを頼っていただきたいところです。

フィードバックは、すべて受け止めなくていい

敦子
続いて田さんは、「自分が他者からどう思われているかを知る」プログラムに取り組みました。他者に対して、「私のことをどう考えていますか?」とヒアリングするんです。

田さんには、「5人くらいにヒアリングしてみてください」と伝えたのですが、社内の全員だけでなく、社外の知り合いにも声をかけてましたね。
田さん
せっかくなので、5人だけの意見じゃヌルいなと思って。Googleフォームで「私がどう見えていますか」「私はどうやったらもっと良くなりますか?」の項目を作って、いろんな人に聞きました。

敦子さんから「意図と目的をちゃんと伝えることが大事」と教わったので、「私はもっと変わっていきたい、もっと自分自身を良くしていきたいと思ってます」のメッセージも添えましたね。
敦子
全部で120人くらいの方から回答がありましたよね。愛のあるメッセージが、いっぱいだった。
田さん
「“こうすればいいのに”と感じています」など、ありありと書かれてました。中には、「そこまで書く?」と感じるくらいに辛辣な意見もあったんですが、今思うと私の「変わりたい」という真剣さが伝わったから、あそこまで書いてくれたんだろうなと。
敦子
そんな膨大なフィードバックを前に、田さんは自分にとって必要なもの、合わないものを取捨選択していきました。

勘違いされやすいんですが、フィードバックとは「あなたのここがダメ」を指摘するものではありません。「フィードバックする側の見え方や捉え方、コミュニケーション」が現れているものなのです。

他者の視点を活用して、自分のコミュニケーションや考え方にどう生かすか?を考える、参考なんですね。
田さん
その視点、すごく衝撃的でした!
敦子
フィードバックには、他者視点のジャッジが含まれます。でも、そのジャッジを採用するかどうかは、こちらに選択肢がある。
田さん
たとえば「田さんは上司へのコミュニケーションが雑です」という同僚からの厳しいように見えるフィードバックをもらったところ、敦子さんは「この人は田さんに嫉妬してますね」と捉えていて。私が思いつかないような、ぜんぜん違う角度からの見えかたがあるんだなと気づきました。
どのフィードバックを参考にするか?その選択肢は、自分自身が持っています。
敦子
その人自身に、本当はもっと田さんのように上司とフランクに会話をしたい欲求がある。でも抑制していてできていない状況。それが、田さんへのフィードバックに出ていたんじゃないかなと思いました。

では、様々なフィードバックを受けて、どんな印象を持ちましたか。
田さん
伝え方が9割だな、と。

同じことを言っているのに、伝え方次第で「なるほど」と「イラッ」とするものがあるなと気づきました。一方で、「私はそういうイラッとする伝え方ばかりしていたな」とも思ったんです。「いつやるんですか」「なんでできないの」みたいに、いつもド直球だったから。たとえるなら、伊良部。
敦子
伊良部(笑)
田さん
「そっか、まわりとコンフリクトを起こしていたのは、こういうところだったんだ」と実感しました。他者に対して、めちゃめちゃにどぎついコミュニケーションをしていたんだなと、自分の痛いところを突かれました。
敦子
こうして「自分が他者からどう思われているかを知る」プログラムを終えたあとは、コンフリクトを起こしていた相手とリアルで対話をする機会を設けることもできましたよね。
「周囲とのコンフリクトを自身で調整できるようになる」が達成できて、晴れて田さんはコーチングを卒業しました。
田さん
3ヶ月くらいでしたね。あっという間だったけど、コーチングにも関心が生まれたし、敦子さんとこのままビジネスライクにお別れするのもさみしいなと思って、今は友達です(笑)。

コミュニティのやりがいは、人がつながり、変わっていく姿が見られること

敦子
続いては、田さんのコミュニティ活動について教えてください。昔から、コミュニティが好きだったの?
田さん
学生の頃から、部活やサークルを盛り上げたり、まわりの人を巻き込んでイベントをすることは好きでした。自分が楽しいと思うことに夢中になってると、人が集まってきて、新しい繋がりが生まれていくのが面白いなと思っていたんです。
敦子
コミュニティを運営してきた中で、どんなことが印象に残っていますか。
田さん
PRとコミュニケーションのコミュニティ「でんこラボ」を2年くらい運営したとき、自分はストイックな関わりが好きだなと思いました。あとは、ギブ&ギブの関係はすごく嫌いだと気づいたこと。テイカーが集まりやすくなるので。
敦子
テイカー(Taker)。求めるだけの人ね。
田さん
やっぱり、ギブ&テイクがいいです。そのうちに、自分自身が気持ちいいと感じて、人も動くやり方が分かってきて。でんこラボの2年目は短期集中型にしようと考え、活動期間を半年と決めてストイックにやりました。すると、メンバーが次々に新しいチャレンジをして、達成感がすごかった。

そんなふうに、コミュニティにもっと自分自身がコミットしたいし、参加する人にもグイっと自分を変えるきっかけにしてほしい。人が変わる姿を見ることは、私のやりがいであり、自己効用感にもなるんです。これらの経験が、今のPenguinsへと繋がっています。
敦子
今年の3月にスタートしたFirst Penguinsは、コーチングのコミュニティですね。
田さん
そうそう。今の自分を変えたい人向けの、オンラインコーチングコミュニティです。「やりたい」ことを整理して、「やっている」状態にする。そして、プロの方達からアドバイスを受け、生活習慣の改善やセルフマネジメントを実行し、自分のありたい姿になっていることをゴールにしています。

ないを、あるに変えていく

敦子
私としては、ようやく田さんが動き始めたという感覚があります。初めて会った頃から「いつか、自分で何かことを起こす人なんだろうな」と思ってました。でも、心の準備が自分の内側で整わないと進まないから、どのタイミングだろうと見守っていたんです。
田さん
会社勤めをやめて、一時的にフリーランスのPR・広報で業務委託の仕事をやっていましたが、相手都合で振り回されることが続いたんです。自分でコントロールできている感覚にはなれず、しっくりこなかったんですよね。そんなときに敦子さんが、「自分で始めないの?」って言ってくれて。
敦子
現状維持で満足しきれなくなると、モヤモヤが生まれる。そこには、何か新しいことをやりたい欲求があるんだけど、「今のままでもいいんじゃない?」と現状にも引っ張られます。そこからどうやって前進させるか?を、田さんと何度かやりとりしましたね。
田さん
考えてみたら、私は「あのプロダクトを作りたい」「このアイディアを形にしたい」と、要は「自分でビジネスをしたい」と、以前からちょこちょこ口に出していました。

で、敦子さんから背中を押してもらったのと、私の人生のテーマは「いつかをいまに」だから、「やってみよう!」とPenguinsを始めました。今も手探りなんだけど、気づくことがたくさんあります。
敦子
たとえば、どんなこと?
田さん
会費の設計には、すごく頭を悩ませました。ある方が挑戦したいことがあってコミュニティ参加への意欲はあるんだけど、会費を気にして入会を悩んでいて。一時は、その人に合わせてコミュニティの会費を下げようかな?と考えたんです。

でも、それは違うなと気づいて。「変化できる自分になる」がPenguinsの価値だから、「定価でその料金を出せるように仕事を作り上げていきませんか?」と提案したんです。
敦子
うん、うん。
田さん
すると、「すごく悩んだけど、そんな自分になれるように頑張ります」と入会してくれて、「これだー!」と確信したんですね。払えないんじゃなくて、払えるように行動を変える。「ない」を「ある」にしたい。
敦子
世の中、ないないって言う人が多いからね。
田さん
初めてでわからないこと、不安なことも、やり方次第だから。私も一緒に、コミュニティの仲間と「ないのハードル」を乗り越えていきたい、そう言えるようになりました。

「私がやっていいの?」みたいなおこがましさも感じつつだけど、そこから逃げずにトライできていて、私自身も良い状態だし、なによりみんなのエネルギーが濃いコミュニティになっています。

シンプルに、軽やかに生きていこう

敦子
それでは田さんは、これからどんなことをしていきたいですか。
田さん
コミュニティを始めたばっかりなのにね(笑)。すぐね、敦子さんは「先に行こう」って言うの。イヤじゃないけど、もう少しゆっくりさせてよ〜と思う時もあります(笑)。
敦子
やりはじめて形になっていることは、脳の中では出来上がっている状態なんです。だから、先を考えていきましょう!

そうでないと、すぐに現状維持になって、何かうまくいかないことやできていないことを考えたり、人へのダメ出しが始まってしまうんですよ。
田さん
今から先のことをセットしておかないと、私はすぐに飽きちゃう。そういったところも、敦子さんはよく分かってるなと思います。敦子さんのコーチングは、じわじわ効くんです。保温効果が持続するような、豚の丸焼きがじりじりと火でずっと炙られている感じ?(笑)
敦子
つねにね、うちわで風を送っているような(笑)。コーチングでは傾聴も重視されるんですが、私はクライアントさんが未来を描き、前進し続けるアプローチがモットーなんですね。
自分を縛るバイアスを手放すと、人生はもっと軽やかに
田さん
なるほど。そうですね、コミュニティは仕事ではなくて、私のベースにある存在なんです。あると温かいもの。それがあると、より新しいチャレンジができそうな感覚があります。

今、次に向けてやり始めているのは、飲食業界での業態開発やブランディング、PR関連の仕事ですね。人と人をつなげることや新たな価値の創造と提案が、私のやりたいこと。過去に培ってきた関係性を生かしたビジネスを、少しずつ始めています。

過去10年間、食にまつわる仕事をしてきたのですが、やっぱりそこに関わる人たちが好きだし、自分も好きな業界なんだなぁと、少し離れてみて気づくことができました。ITも好きなので、食を好きな人がその仕事に没頭できるよう、より効率的な仕組みづくりをしていきたいなと思っています。
敦子
田さんはそういう効率的なこと、好きだよね。社会課題を解決することにも、興味があるのかな?
田さん
そうですね。課題解決、大好きです(笑)。ハンコみたいに、いらない慣習はやりたくないし、自分自身もやりたいことにだけ集中したい。シンプルに軽やかに生きたいし、そういう社会になってほしいというか、そういう社会に自分がしたいという感じかな。

やり方は、いくらでもありそうだけど、私はプレイヤー側にいたい。野球でいうと足が速くて小回りが利いて、いろんなポジションの守備がとにかくうまい選手が好きだし、自分がなりたいイメージです。

インタビューを終えて

とてもエネルギッシュな田さんでした。セッションを通して、ご自身が囚われていたバイアスに気づき、軽やかな人生をまい進されています。

Starting Pointでは、働くを「人と動く」と定義しています。働くとは、企業や組織の中だけに留まりません。誰かのミッションに従うのではなく、自分のやりたいことを見つけ、それを実現するために、誰と何をしていくか?が、働くことの本質であると考えます。田さんのインタビューには、まさに「自分らしく働くとはどういうことか?」の1つのアンサーがありました。

執筆:マチコマキ / イラスト:竹内巧