「あなたはどうしたいの?」の問いかけが、思考や行動の起点に

クライアント プロフィール

合同会社Wisham(ウィシャム)代表・鈴木綾子さん

システムエンジニアとして勤務する傍ら、「ペットの健康寿命を延ばす」をテーマに、ペットフードやペット関連サービスの開発・販売を手がける、合同会社Wishamを起業。2019年より事業に専念する。2020年10月に、犬猫の水分補給をサポートする手作りゼリーの素「Gelletta(ジュレッタ)」を販売開始。保護猫出身のきょうだい猫・こんぶとみかんは、大切な家族であり、仕事の頼もしい相棒です。
ジュレッタHP:https://wisham.co

悩んでいた職場の人間関係。コーチの問いかけから、自分の本当の気持ちに気づく

敦子
今回、クライアントインタビューにご登場いただくのは、合同会社Wisham(ウィシャム)の代表・鈴木綾子さんです。

はじめに、綾子さんのお仕事について教えてください。
綾子さん
Wishamは、「ペットの健康寿命を延ばす」を目的に、ペットフードやペット関連サービスの開発・販売を手がけています。

ペットの健康は、食習慣を整えることで保たれる面が多いんです。とくに猫の場合、十分な水分を採ることは、猫がかかりやすい病気の予防にもなります。そこで、昨年の10月から「食べること」で水分補給をする、猫用ゼリーの「ジュレッタ」を開発、販売しています。(※1)

※1:犬用ジュレッタも発売中。

敦子
綾子さんとの出会いは、綾子さんがシステムエンジニアとして会社にお勤めのときでしたね。女性のキャリアを考えるワークショップがあり、私がその講師でした。
綾子さん
そうでした。それまでは、まわりにシステムエンジニアの女性が少ないこともあって、あまりキャリアを考える機会がなかったんです。ランチ会も兼ねたワークショップだったので、「どんな話をするんだろう?」と、同僚と気軽に参加しました。
敦子
そこで綾子さんは、「職場でのコミュニケーションに悩んでいる」と話していました。それを受けて、「やりにくいと感じているのは、綾子さんだけかもしれません。相手へ、素直にその気持ちをシェアしてみたらいかがでしょう」と、話したことを覚えています。
綾子さん
そのアドバイスは、すごく予想外でした。苦手だなと感じている相手へ気持ちを伝えるって、なかなか思い浮かばない方法ですよね。

でも、ワークショップで敦子さんとお話をしながら、「私は何に対して、嫌悪や恐怖を感じているんだろう」の気持ちを、1つ1つ分解していったんです。すると、鏡を見せられたみたいに「私の本当の気持ち」が明らかになった感覚がありました。
敦子
「相手はこう思っているに違いない」のように、自分の推測で思考や行動の範囲を狭めていることは、たくさんあるんです。「その思い込みは何か?」が見つかると、視界が変わるんですよね。

アドバイスや指示より「あなたはどうしたいの?」が欲しい

敦子
では、システムエンジニアとして活躍していた綾子さんが、なぜ起業したのか?を教えてください。
綾子さん
実は、過去にペットロスを経験し、「もっとペットにできることがあるんじゃないか?」と歯がゆい思いを抱えていました。そのうちに、ペットの健康寿命に関心を持ち、いつか仕事にしたいと考えるようになったんです。

もちろん、ペットとのお別れは避けられませんが、ペットの健康に気を配り、元気に長生きできる環境を作ることはできます。そこで「ペットの食事」にフォーカスし、会社員時代から勉強や起業の準備をしていました。
敦子
ペットフード販売士、愛玩動物飼養管理士などの資格は、そのときに?
綾子さん
はい。でも、システムエンジニアとWishamの仕事、家庭の両立は難しくて、すごくジレンマを感じていたんです。

そんなとき、あるイノベーター育成プログラムに参加したところ、ビビビっと雷が落ちたんですよ。「何も死にはしないのだから、やりたいことをやろう!」と、会社を退職し、Wishamに専念しようと決めました。
敦子
ビビビっと、雷が。
綾子さん
そうです。めちゃくちゃ悩みましたが、「人生の時間は決まっているし、今が1番若い。だったら、やっちゃおう!」って。

そして、敦子さんのことを思い出し、「定期的に話を聞いてもらえませんか?」とコーチングをお願いしました。
敦子
コーチングに関心を持ったのは、どんな理由があったんでしょう。
綾子さん
敦子さんのワークショップで体験した、「あなたはどうしたいの」「なぜそれをやりたいの」の質問が印象に残っていたんです。会社組織にいても、起業したとしても、「私はどうしたいか?」が一番の基本。

だから、「こうしなさい」と指示やアドバイスをもらうのではなくて、問いかけから自分で考えるコーチングのほうが、私には合っているなと思いました。

それに、自問自答だけでは前に進めている手応えを感じにくいし、相談相手が欲しかったんです。敦子さんなら、私をありのままに受け止めて、何かを返してくれそうな信頼感がありました。

コーチングから得た変化。失敗を認め、自分のやるべきことが明確に

敦子
私のセッションは、とくにテーマやアジェンダを設けずに「今日はどんなことをしゃべりたいですか」から始まります。初めの頃、綾子さんは「サービスのネーミングに悩んでます」とお話されていましたね。
綾子さん
はい。「ペットの健康寿命を延ばす」がビジネスのテーマでしたが、「何をするか?」のソリューションが、明確ではなかったんです。それで、サービスの名前が決まらず、グズグズする時期が続いていました。

そこで敦子さんに、「こういう考え方もあるよ」「こんなふうに考えてみたら?」と、問いを投げてもらいましたね。今でも思うのですが、サービス名に価値をぎゅっと詰め込むプロセスは、すごく辛かったです。
敦子
どんなことが辛かったんでしょう。
綾子さん
私がずっとやりたいと考えてきた「ペットの健康寿命を延ばす」って、本当に価値はあるの?と揺らいでしまい、自信をなくしちゃう瞬間が何度もあったんですよ。

メリットはこれとこれ・・・と挙げる中で、「本当に?」「その中の一番大切なことは何?」と、価値を追求していく作業に、すごく悩みました。
敦子
自分にとって価値だと感じてきたものを、客観的に判断する。ときには、否定する感覚もあったり。
綾子さん
そうですね。あのときは、敦子さんと「提供したい価値ってなに?」のセッションを重ねて、自分と対話する時間だったのかなと思います。おかげで、「私はこれをやるんだ」とハッキリしました。
敦子
コーチングをはじめて、綾子さんが感じたご自身の変化を教えてください。
綾子さん
過去の失敗を、認められたことですね。ジュレッタは、初めに考えた事業からピボットして生まれましたが、ピボットしたことを認めるのが辛かったんです。私は優等生的な面があり、「恥ずかしいところ、みっともないところを見せたくない」「失敗したって認めたくない」の気持ちが、すごく大きかったんですよ。

でも、ジュレッタのアイディアが生まれ、製品化し、お客さまにちゃんと購入いただけたことで、過ちを認められました。これは、私の中で大きな成長のポイントです。

コーチは、カーナビではなく自分のエンジンを増やすターボボタン

綾子さん
ところで敦子さんは、セッションのときに、どんなことを考えているんでしょうか。私は、うまくいってないときのモヤモヤが、顔に出てしまってるんじゃないかと気になるんです。
敦子
セッションのとき、「クライアントが今どういった状態か?」は、あまり関係ないですし、私も気にはしていません。セッションでは、クライアントが作りたい世界観をしゃべっていただきながら、ご自身のイメージをより明確にしていただくアプローチをしています。
綾子さん
言われてみると、そうですね。話すのが心苦しいときも、セッションが始まってしまえば、目の前のことより先のことを聞かれるし、気づけば前を向いています。
敦子
綾子さんは、本音で作りたい世界観を持っていて、それを未来に向けてバシっとピン止めされている方です。そんな綾子さんがモヤモヤしているときは、足元しか見ていない状態なんですよ。

そんなとき、私が「下向いてるよ!上向いて」とアプローチする。すると、綾子さんはすぐに「そうだそうだ。あれもこれもやらないと!」と、ピピッてアンテナを立てて、前へ動き始める。そのための、セッションです。
綾子さん
なるほど。下を向いているって、1人ではなかなか気づかないんです。でもコーチングでは、「どうしたいの?」と聞かれることで、自分の状態に気づき、答えが引き出される感覚があります。

車で例えると、自分の中にエンジンをもう1個増やす、ターボボタンのようなイメージです。カーナビじゃないんですよね。行き先は自分で決めるし、押す押さないも自分が決める。でも、困ったり迷ったときは、エンジンを加速するボタンがあるんだよ、という感じです。

それに、落ち込んだり、イライラしたときは、私の中のちっちゃいあっちゃんを召喚するんですよ。
敦子
「ちっちゃいあっちゃん」?
綾子さん
そうです、小さい敦子さん。「モヤモヤしてるときは、脳が暇してる証拠だよ」って言葉をささやいてくれるので、「ちょっと肩の力を抜こう」って客観的になれます。
敦子
面白いですね。「脳が暇してる」は、セッションの中でよく出てきますよね。

実現したい未来やこうなっていたい自分は、すでにその状態であると捉えて、脳の意識を未来へ持っていくんです。すると、行動も促されるから、立ち止まってられないんですよ。
綾子さん
そうそう。落ち込んでる場合じゃないなって思います。

また、「そんな高い目標が自分に達成できるの?」って考えそうなときも、「違う、違う。私はもう、目標を達成した先にいるんだ」と思うと、我に返りますね。

ペットと人が、ともに幸せな世界を作りたい

敦子
では終わりに、綾子さんのこれからについて、お話しください。
綾子さん
まずは、飼い主の皆さんが、当たり前のようにペットの健康をケアできる環境を作りたいです。そのための情報発信はもちろんですし、ジュレッタだけでなく、様々なフードやサービスを提供して、ペットたちの健康寿命を支えたいと考えています。今、13歳、14歳前後と言われている飼い猫の平均寿命を、20歳に伸ばすことが理想です。

飼い主さんが知識を得て、ペットの健康をケアすることは、ペットと別れたあとの心の状態にも影響すると思うんです。健康のままでペットが寿命をまっとうすることは、人の幸せにもつながると考えています。
ハチワレのこんぶと一緒に
敦子
綾子さんにとって、ペットはどんな存在ですか。
綾子さん
我が家には、保護猫出身のきょうだい猫がいますが、彼らと一緒にいるときでしか味わえない気持ちがあります。「自分の中にこんな感情があったんだ!」と驚くような、原始的な喜びでしょうか。

心の底から「愛したい!可愛がりたい!うわああ、かわいい!」と、感情が爆発するんです。癒やしや安心感もありますね。そんな感情をもたらしてくれる彼らがいる人生は、手放しに幸せだと思います。

インタビューを終えて

猫への愛にあふれる、鈴木綾子さんでした。セッションでは、現時点の悩みの解決ではなく、クライアントの方が作りたい世界観を話していただきながら、ご自身のイメージをより明確にしていただくアプローチを行います。実は「悩んだときに、小さい敦子さんが出てくる」は、他のクライアントからもよく言われる言葉です。セッションのあとも、ご自身で問いかけができる習慣が生まれているのだと感じます。

執筆:マチコマキ