「思い」の言語化が当事者意識を強め、自立し成長するチームを作る

クライアント プロフィール

株式会社ウフフ 代表・志賀嘉子さん

ウエディングプランナーや雑誌編集者などのキャリアを経て、2016年にサービスの前身となる、ドーナツの卸販売事業をスタート。2018年からは、ウフフドーナチュへリブランディング。現在は、金沢市内に1店舗を運営し、卸販売、催事、ECと、日本中にドーナツを届けています。

ウフフドーナチュ公式サイト https://ufufu-ufufu.com/

自発的な行動をしてほしいのに、指示待ち状態・・・。会社とメンバーの間に温度差が

敦子
Starting Pointでは、組織開発コンサルティングとして、組織課題にあわせたオーダーメイドのコーチングを行っています。

その事例に、株式会社ウフフの代表・志賀嘉子さんにご登場いただきました。志賀さんは、石川県金沢市で、ウフフドーナチュというブランドのドーナツを、製造・販売されています。
志賀さん
志賀です。よろしくお願いします。ウフフドーナチュは、全国への卸販売がメインで、金沢市内に直営のショップが1店舗あります。

働くスタッフはほとんどが子育て中のママ。もともと「女性が安心して働ける場所を作りたい」と事業を始めたので、土日祝日はお休みです。毎日生地から、保存料無添加の手作りドーナツを作っています。
種類も豊富なウフフドーナチュ。ネットショップも人気です。
敦子
志賀さんとは、定期的に近況を報告しあう間柄でした。いつものように話を聞いていたら、「会社の組織作りに迷われているのかな」と感じたんです。そこで、私から「チームビルディングのコーチングを受けてみませんか?」と提案したことが始まりでした。
志賀さん
コーチングがスタートしたのは、昨年の4月です。その頃は、緊急事態宣言が出されて、ウフフもお客さんが少ない時期でしたね。

当時は15名ほどメンバーがいて、シフトを減らしたくない、なんとか仕事を作ろうと考えていたのですが、私1人が奮闘している状態になってしまって。判断も指示出しも、すべて私という状況でしたね。「これじゃあ、いけない。組織を作らないと」と思っていました。
敦子
そのメンバーの数って、大所帯ですよ。事業の成長に、組織作りがなかなか追いつかないケースはよくあることですが…。
志賀さん
それに、「自分だけじゃ引っ張っていけない」と決心した出来事もあったんですよ。
おととしの年末の話ですが、海外からドーナツの発注をいただいて、3,500個を納品したんです。すると、取引先から「商品のラベルを張り替えてほしい。明日すぐに来てください」と連絡があって。
敦子
3,500個!それは大変でしたね。どうやって、対応したのですか。
志賀さん
「年末年始だし、みんなには家庭がある。1人でやろう」と思って、納品先がある能登まで出かけました。納品先の方が手伝ってくださり、無事に終えられたんですけど・・・。「私は自分の会社の人を頼れないんだな」と、むなしかったですね。
敦子
志賀さんも育児中ですよね。「誰か手伝える人いない?」って、声をかけられなかった?
志賀さん
かけられませんでしたね。みんな、気にしてしまうかな?と思って。なので、「リーダーになる人を採用しよう」と考えていました。そんなとき、敦子さんからコーチングの提案をいただいて、社内の人材育成に目を向けたんです。
私自身も、敦子さんと話をすると思考の整理ができる実感がありましたし、うちのスタッフは、仕事だけじゃなく、子育てや家事と、いろんなことが同時進行で進んでいる人たち。敦子さんは、子育て経験者ですし、「仕事に限らず、みんなの考えていることをまとめて聞いてくれる!」とお任せしました。

社員それぞれの強みと弱み、期待していることを言えますか?

敦子
組織開発のコーチングでは、まず経営層やマネジメント層に、今年の計画を聞きます。そして、組織図を見ながら、チームメンバーの強みと弱みをお話いただきます。そして、「誰に、どんなことを任せたいですか?」と、期待を言語化していきます。

志賀さんにも、社員の方を中心に「この人の強みは?」と聞いていきましたね。そのあと、会社からの期待とメンバーの気持ちをすり合わせるセッションを行いました。
志賀さん
とはいえ正直なところ、まだまだ私自身が、みんなの強みを気づいていなかったと思います。敦子さんのほうが、「あの人は伸びますよ」と見抜けていて。
敦子
はじめのうちは、まったく関心を示さなかった方も、途中からノートを用意して、すべてメモするくらいに変わった方もいらっしゃいましたね。
志賀さん
セッションは、敦子さんとメンバーの1対1で行い、私は3ヶ月に1度くらいに同席して、目標を確認していく・・・という形で進んでいます。
いろんなメンバーがいると思いますが、敦子さんはどんなふうに話を切り出していたんですか。
敦子
まずは、趣味などを聞きますね。自分の好きなことや、やってみたいことの話題になると、皆さん楽しくなって、お話するようになります。考えていること、感じてることを言葉にしていくと、当事者意識が高くなっていくんです。

そして、少しずつ仕事で期待されていることを、ときには志賀さんも交えて擦り合わせしていく。今できているかどうか、気になることがないか?と聞いていると、ご本人が話せるようになっていきます。
志賀さん
自分の気持ちを言葉にすると、当事者意識が生まれるんですね。実は、コーチングを受けてから、それまで口数が少なかったメンバーが、よく話すようになったんです。

それに、口数が少ないのは「考えをまとめているから」と理由を知って、今まで感じていたモヤモヤが晴れました。また本人も、「返事はちょっと待ってくださいね」と伝えてくれるようになったので、コミュニケーションが楽になりました。組織の中でも、頼られる存在になっていますね。
敦子
志賀さんもそうだし、ウフフの皆さんは忙しいママたちが多いから。意識しないと、話す機会がないんですよね。
志賀さん
そうかもしれません。それに、コーチングを受ける前は、みんなで共通の目標に向かっていなかったと思います。今は、スタッフ同士で話す機会が増えて、考えていることもわかるようになりました。誰が、どんなことを目指しているか?が共有されると、応援やサポートがしやすくなるんです。

私も、みんなの強みや目標を踏まえて、どんなふうに声をかけたり、お願いするといいかな?と考えるようになっています。

メンバーの経験や挑戦したい意欲に任せたら、事業が伸びて、経営も楽に

敦子
コーチングがスタートして1年になりますが、チームはどんなふうに変わってきましたか。
志賀さん
すぐに変わった印象があります。お客さんが少ない時期に、「新しいことしよう!」とキッチンを借りて、一時的に食堂をオープンしたんです。

私は、まったくのノータッチでした。スタッフの中に、調理やメニュー作りができる経験者がいて、全部お任せです。私は、みんなの経験を生かすことを最優先に、利益も二の次で考えて、とにかく仕事を作り、働く場所を守ろうと後方支援に回りました。
敦子
変化がスピーディですね。みんなが、自発的に動いてくれるチームになってる。
志賀さん
ウフフドーナチュの運営についても、みんなが自立して動けるようになっています。私があれこれ口を出すと、面白みがなくなっちゃうから、見守ってますね。中には、「自分がこんなに仕事を頑張る人だと思わなかった!」と話すメンバーもいます。
敦子
「それは私の仕事?」といった状態から、当事者意識が芽生えて、行動に繋がってるんですね。
志賀さん
それまでは、仕事が立て込んでいるときも、私1人が残業してました。でも、おのずと誰かが「発注処理や製造が終わらなそうだ」と気づくようになり、シフトを調整したり、ときには土日出勤したりして、時短や製造効率を上げる工夫をしているんです。

事業はものすごく加速してるんですが、私の仕事は本当に楽になりました。あとね、スタッフの採用基準を変えました。
敦子
どんなふうに?
志賀さん
以前は、とにかく「仕事が早いこと」が第一でした。でも、これまでを振り返って、そこじゃないなと分かったんですね。

今は、ウフフドーナチュや私自身が、テレビなどのメディアに出ることも増え、会社のビジョンや私の考え方に共感された方が、応募してくださってます。それも嬉しいんですが、「ウフフにこそやりたいことがある」「新しい働き方をサポートしたい」と考えている人を、採用するようになりました。
ウフフドーナチュで働く皆さん。
敦子
志賀さん自身の視点も、より先に向かっていますね。では、コーチングをあらためて受けてみて、いかがでしたか。
志賀さん
何か悩んで行動できない状態は、もったいないと思います。コーチングでは、頭の中で、モヤモヤ・ぐるぐる考えていることを、言葉にして整理できる。すると、方向性が見えてきて、動き出せます。

実は、コーチングをお願いしようと決めるまで、「成長したいって考えている人はいないんじゃないか」と考えていたんです。「もっと気楽に働きたいんですけど・・・」みたいに、引かれちゃうんじゃないかなと。
敦子
空き時間だけとか、扶養の範囲内で働きたいなど、本当はもっとできるのに制限をかけてしまう方はいらっしゃいますからね。
志賀さん
働くことへの姿勢は自由です。でも、考えて動ける人になってほしいし、「志賀さんの手伝いをしている」集まりではなく、「株式会社ウフフの一員なんだ!」と思える組織になりたかったんです。

結果として、スタッフの姿勢が目に見えて変わっていったし、ウフフドーナチュの仕事を楽しいと感じてくれている。仕事は、人生で長い時間関わってくるものだから、やりがいに変わる感覚を持つ人が増えたことは嬉しいです。

女性の活躍やユニークな会社の存在を、ドーナツと一緒に届けたい

敦子
もともと志賀さんは、ご自身の妊娠・出産をきっかけに、女性が働きやすい環境を作りたいと考えて、ウフフを創業しましたよね。あらためて、これまでのことを教えてください。
志賀さん
学校を卒業して、ウエディングプランナーや雑誌の編集者など、とにかくハードに働いてきたんです。でも、突然クビになった経験があり、会社がないと、大好きなお客様やスタッフと一緒に仕事をすることができないんだなと実感しました。
敦子
うん、うん。
志賀さん
その後、営業代行の仕事をするのですが、営業先の方からフィードバックをいただいても、自分の商品ではないから、すぐに改善などができないんです。それがもどかしくて、自分自身で経営すれば、価値観のあう取引先と仕事ができるし、その声を反映して良いサービスや物作りができると考え、事業の方向性を決めました。

ドーナツにしたのは、子ども達が好きなものだから。ママたちが集まってせっかく作るから、子供が喜ぶものにしようと決めました。
志賀さんと「店長」の娘さん。
敦子
そのポリシーは、ウフフドーナチュからすごく感じます。卸販売先も、とても厳選されていますし。
志賀さん
また、創業するときに決めたことが、もう1つあります。それは、みんなができる仕事の仕組みを作ること。今までは、「志賀さんじゃなきゃ」と言われることが嬉しくて、私にしかできない仕事をしてきたんです。

でも、属人的ではビジネスが成長しないんですよね。例えば、「急に子どもが熱を出して・・・」の時にもすぐに休めるよう、同じ仕事ができるスタッフが複数人います。みんなも私も、すぐに休める環境を作っています。
敦子
2018年に、ウフフドーナチュへリブランディングしてから、より注目が集まるようになり、会社や志賀さんの発信力も高まっていますよね。
志賀さん
そうですね。でも、うまくいかず、どうしようと悩んだ時期はありました。ウフフは、私が妊娠中にはじめて、なかなか思い描くようないい商品ができなかったんです。

そんな中でも、一生懸命売ってくださる卸先の方、「ドーナツ作りが楽しい」と励むスタッフがいる。辛かったけれど、応援してくれる、がんばっている人を前に「売れないから止めよう」とは言えなかったですよね。泣きながらやってました。
敦子
そんな志賀さんの頑張りが、女性のチャレンジ賞の受賞や、地元農家さんやNPOとのコラボレーションなどへ繋がっているんだなと思います。

では、ウフフドーナチュと志賀さんのこれからをお話しください。
志賀さん
ウフフの未来は、眩しくて見えないですね・・・(笑)。まずは、店舗を増やそうと考えています。働くみんなに、「ここでこそやりたいことがある」と思ってもらえる会社でありたいから、成長した人がいるべきポジションを作り続けなくてはなりません。スタッフの成長の受け皿として、会社も成長していくことが目標です。
敦子
楽しみですね。やりたいこと、願うことはどんどん発信していきましょう。
志賀さん
それに、直接お仕事をする関係でなくても、私たちの会社から刺激を受けてくださったら嬉しいです。

全国への販売も、ウフフドーナチュを通して、「こんな会社があるんだ」「面白い取り組みだな」と感じ、「私たちも頑張ろう」と前向きになっていただけるような存在になろうと思うからなんです。

これからも、より強いメッセージを持って発信、行動するウフフでありたいです。

インタビューを終えて

飲食業も、ドーナツ作りも未経験(!)でスタートした、ウフフドーナチュ。全国にたくさんのファンがいらっしゃって、世の中に求められてる会社に育っているプロセスを感じます。また、お仕事のルールもユニーク。手作りゆえ、少しドーナツの形が違っても、「そっちの方が大きい!」のような兄弟ケンカが起きない範囲なら、「OK」としているそうです。「会社とはこうあるべき」のテンプレートにはまるのではなく、自分たちの働きやすさを考えながら、歩いている会社です。

このように、会社は、経営層と従業員の方向性が一致し、それぞれが力を最大限生かせる環境を作ることが大切です。コーチングでは、ひとりひとりの強みを引き出し、組織を作り上げるサポートを行います。

執筆:マチコマキ

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