45歳定年制は避けられない!?後悔しないキャリアデザインをつくろう

こんにちは。組織開発コンサルタント・行動促進研究家の鈴木敦子です。

「45歳定年制」が、物議を醸しています。

サントリーホールディングスの新浪剛史社長による発言がきっかけですが、「一方的な首切りなのでは?」と不安や怒りを表現した声がSNS上で相次ぎました。もともとの話のテーマは、「ウィズコロナの時代に必要な経済社会変革」。同氏は「会社に頼らない姿勢が必要」とも話していましたが、結果として「首切りではない。社会がいろいろな選択肢を提供できる仕組みが必要」と、釈明されています。

(参考記事:「首切りではない」 45歳定年制でサントリーHDの新浪社長釈明

みなさんは、「45歳定年制」にどんな印象を持ちましたか?

わたしは、あらためて組織の人事課題が顕在化していると感じました。実際に、コーチングや人材開発コンサルティングの場で接するクライアントは、40歳前後〜55歳くらいの方が中心です。つまり、これからのキャリアやご自身の課題とどう向き合ったらいいか悩んでいる方が多いということ。

実際のところ、45歳定年制のリアリティは高まり、近しい人事施策を行う企業が出てくるかもしれません。ここを、チャンスにするかピンチと捉えるかは、あなた自身です。「こんなはずでは!?」とならないためのアドバイスを、ご紹介します。

45歳中年期にむけて準備すること

組織には組織の事情がありますし、経営状況次第では会社を辞めざるをえない場合があると考えていたほうがベターです。ですから、特定の組織に依存する考え方や働き方をしていては、せっかく早期退職をして新しい仕事をはじめても「こんなはずでは…」となりやすい傾向にあります。

思うようなパフォーマンスが出せずに再転職を繰り返したり、いつの間にか所属する場所も自信も失ってしまう。そうなってからキャリアを再構築するのは、大変です。「こんなはずでは…」にならいために、ひとつの所属先に依存しない経済力と精神的自立が必要です。

45歳にむけて個人ができること

では、日頃からどんなことに心がけるとよいのでしょうか。

20代では、あらゆる経験の機会を自ら取りにいきましょう。自分は、何が得意で、何が不得意なのか?または、どんなことに関心や興味があるのか、面白いと思うのかは、やってみなければわからないからです。

30代では、20代で経験した中からもっとも興味のある領域で専門的な知識や経験を積みましょう。また、専門性を高めながら、広く応用できるように知識や経験の抽象度をあげていきましょう。30代をどのように過ごすかで、40代以降のキャリアが変わってきます。

個人のキャリアデザインに必要な3つの要素

自分の働き方や仕事のスキルについて主体的に考える「キャリアデザイン」は、一般的になりました。しかし、キャリアデザインを「組織に属すること前提」に考えてしまうと、本来の資質がいかせません。何歳からでも挽回できます。遅すぎることはありません。気づいた瞬間からしっかりと人生を通して、「何をやりたいのか?」を明確にしてスタートしましょう。

特に、次に紹介する3つの要素は重要です。つねにアウトプットし、明確に言語化することが大切です。

「何を」求めて、「何を」を活用し、「何をするか」方向が明確になっていると、迷わず能力を発揮できます。

キャリアデザインに重要な要素3つ

  1. 欲求
  2. 関心
  3. 資質

ひとつづつ説明します。

1.欲求

行動は、欲求から始まります。人の欲求は身体的な欲求(眠い、お腹がすいた)と心理的欲求の2つに分類されます。細かくみていくと、70以上の項目にわけられます。

心理的欲求は、「〇〇したい」という言葉で表現されます。「認められたい(承認)」「他者よりも優れていたい(優越)「やりとげたい(達成・継続)」などは、一般的に表出頻度が多い欲求です。

「〇〇したい」と思っているけど、行動には、あらわれない。例えば、本能的には「認められたい」と思いつつも、抑制してしまい行動することができないケース。また、「〇〇したい」と思っていたことが、実は、やりたいことではなく親の影響からの思い込みだったというケースもあります。他者や属性の良しとする考えを取り入れていることは、多くの方にみられるパターンです。その人自身の、本来の欲求をどう見分けていくかは、実に複雑な工程になります。

「〇〇しなければならない」義務や必要性が強くなると、疲弊感や「〇〇させられている」といった被害者意識に陥りやすいですし、本来の欲求と現実行動にギャップがあると、違和感が生じて心理的負荷も高まります。

自分が心から満たされる欲求が何かを明確にすることは、とても大切です。ですが、環境や他者からの影響なのか、自分の感覚から生じているものなのか、自身では分かりにくいという点は、注意が必要です。

2.関心

「興味や関心のあることは何ですか?」と聞かれて明確に答えられる人は、すでに何らかの行動を起こせる人です。自分の感覚や感度を磨いていきましょう。

熱中できることがあると幸福度が高まります。関心の類語で「好奇心」という言葉があります。好奇心は、ものごとを探究したい根源的な知的活動です。好奇心にも「拡散的好奇心」と「特殊的好奇心」の2種類あります。「拡散的好奇心」は、刺激をもとめ、色々なことを知りたいと思うもの。「特殊的好奇心」は、目的をもって、ものごとを深くほりさげていきたいというものです。

どちらにせよ、関心の方向性を自らが定義できていないと行動を起こせません。自分は何に関心をもっているのか?を、改めて明確にしていきましょう。

3.資質


生まれ持った才能や能力は、誰にでもあります。私たちは、個々に違う資質を備えており、自らの才能や能力は、養育過程で何度となく現れているものです。自分の本来の資質を見つけ、のびやかに発揮していきましょう。また、資質は後発的にも身につけられます。それは、何かに強く欲求を持ったときです。

次に、自己理解に役立つ問いをいくつかご紹介します。

  1.  満たしたい心理的欲求の高いテーマは何か?
  2.  社会の何に関心があるか?
  3.  どんなことが得意で好きなことか?
  4.  過去のキャリアで生かしていきたいことは何か
  5.  20年後の目指したい姿は?
  6.  もっとも大切にしたいことはないか?

いかがですか?スラスラと書き出すことができますか?

書き出すことで、目指す方向が明確になります。方向が明確になると、行動すべきことが見いだせます。また、書き出せないことがあっても構いません。書けないとは、今はまだ明確にイメージできていないということ。ぜひ定期的にアウトプットし、イメージを具体化していきましょう。すると、行動できるようになりますよ。

45歳で後悔しないキャリアデザインまとめ

  1. 外的環境は、これからも変わっていくもの。企業や組織も生き残りをかけ、変化せざるをえないでしょう。45歳以降の早期退職を募る制度の動きは、さらに広がっていくと考えられます。そのとき、組織内で必要とされる人材になる、あるいは、外的環境に影響をうけない生き方をするには、個人の能力や成長意欲が不可欠です。

  2. 組織で求められる役割だけでなく、人生を通して“「何」をしていくのか?”、自分の存在目的を明らかにしていくことが大切です。「欲求・関心・資質」の要素や自己理解を深める問いを活用し、ぶれない軸を形成していくことが大切です。

  3. 40歳を超えるころから、加齢による身体の変化、家族のライフサイクルの変化、組織内でのポジションの変化があります。中年期と言われる45歳~60歳は、心理学分野でも人生の転機として、メンタルの変化が起きやすくなる時期とされています。


明確に言葉にすることを「定義」といいます。自身についてを定義することで「こんなはずでは⁉」という想定外の厄介な状況を回避できます。

自分の人生は環境や他者に委ねすぎず、自分でコントロールしていきましょう。

終わりに、45歳定年制のリアリティが高まる組織動向について解説しました。ご参考ください。

45歳定年制のリアリティが高まる組織動向

1外的環境の変化

2020年の出生数は、前年比3%減の84万人と1899年の調査以来最小を記録。人口減時代は、人口が増えることを前提につくられた制度がもはや通用しなくなる!?
経済成長も、鈍化するのではないかというのは、誰もが想像できることですね。また、コロナ禍による経済変化も様々な企業や業界に大きな影響をもたらしています。

業績の悪化、就業スタイルのオンライン化、非接触を考慮したデジタル化への加速によるビジネスモデルの変革。事業や人員戦略を新たに再考する必要に迫られています。

2上場企業の動向

今年度の6月に東京商工リサーチが発表した内容では、上場企業の早期・希望退職者制度を実施した企業数は、50社。人数は、1万225人に達しているとされていました。今夏、ホンダも2,000人の応募があったと発表しているので、企業数や人数は、さらに増えそうですね。そして、各企業の決算報告を読むとだいたい45歳以上、10年以上の勤続者が対象となっていました。

3組織内の従業員構成の歪み

総務省が調査した2012年の年齢別の従業員構成のバランスは、当時35歳~45歳の年齢層が最も多くなっていました。単純に9年を経てスライドしたとして、今まさに45歳~55歳の年齢層が働き手として、もっとも多い層になっています。

事業を牽引してきた中核人材の高齢化は、かなり進んでいます。また、従来の年功序列をベースにした報酬制度を採用している企業では、報酬の高い管理職人員のだぶつきが事業の利益構造を圧迫するという懸念もある。高所得の中高年層が厚くなることで、世代交代に必要な若年層の受け入れにも消極的な姿勢になる。その結果、組織の年齢構成に偏りが起こります。

執筆:鈴木敦子 / 編集:マチコマキ

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