【専門家が徹底解説】組織における攻撃的な人の心理背景と対処法とは?

組織で働いていると、ときには攻撃的な人に関わらなくてはならない場面もあるでしょう。攻撃的な人の心理的な背景を知ることは、うまくやり取りができるようになる第一歩です。そこでこの記事では、人材の能力開発と組織づくりの専門家である当社代表の鈴木が、攻撃的な人の心理背景と対処法について徹底解説します。

攻撃的な人の特徴 〜主張型と受身型〜

どのような人を攻撃的だと感じるかは、人それぞれ違います。
この記事では、攻撃的な人を「不快なコミュニケーションでやり取りの継続が難しい人」と定義して、解説していきます。

一般的に、継続が難しいほどの不快なコミュニケーションには「主張型」と「受身型」の2パターンがあります。どちらのパターンも、相手に負けまいとする目的が心理的背景に隠れています。

主張型は、「自分の言いたいことを押し通す」表現をします。例えば次のような態度が見られます。

  • 言いたいことを一方的に言う
  • 声が大きく高圧的で怒りをともなう感情的な態度
  • 他者の話や気持ちには、寄り添わない
  • 反論できないように仕向ける
  • 支配的でコントロールしようとする態度
  • 追い詰めるような口調、打ち負かす表現を多用する
  • 八つ当たりをする
敦子
このようなコミュニケーションを取られると人は萎縮してしまい、健全な状態でコミュニケーションを継続することが難しくなります。

もう一つの受身型は、間接的主張とも表現され、対象となる人が結果的に困るように間接的に攻撃します。このタイプは、直接的ではないので分かりにくい面もありますが、対象にダメージを与えるという点では主張型と同等です。次のような態度が見られます。

  • 迷惑がかかる振舞いをする
  • チームワークを乱す
  • 陰で不満や悪口を言う
  • 話しかけた際に面倒くさそうにため息をつく、不機嫌そうにふるまう
  • 物に八つ当たりをする
  • 無視をする
  • 返事をしない
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受身型の攻撃は、間接的な態度をとるため問題や課題がみえづらく、対処が難しいともいえます。

攻撃的な人になってしまう理由

コミュニケーションには、必ず目的や意図があります。意識的にも、無意識的なものも。攻撃的だと感じる人自身も、ときには無意識に攻撃的なコミュニケーションをとっていることがあるかもしれません。

なぜ、攻撃的な態度をとってしまうのでしょうか? その理由を解明していきましょう。

攻撃的なコミュニケーションの意図で一番多く見受けられるのは「勝ち負け」です。意識的、無意識的問わず、相手に負けられない、勝たなければならない何かしらの意図があるのです。

心理的な背景は、次の3つが考えられます。

  • 自分の立場を優位に保っていたい(防御)
  • 相手や場面を自分の思い通りに動かしたい(支配)
  • 自分の優位性を証明したい(承認)

こういった心理背景が発生する要因は、安易に断定はできません。複数の要因が重なっている場合もあり、当人が認識しないと態度を改めることができにくいものです。
要因には、例えば次のようなケースが考えられます。

●過去の環境要因
常に周囲がフォローし、本人の思い通りになることが当たり前になっていたら、思い通りにならない現実に憤りが発生しやすくなります。

●攻撃的なコミュニケーションが日常茶飯事
元々攻撃的なスタイルしか知らないというケースもあるでしょう。勝ち負けに固執し、勝たなければ自分自身の価値が無いという先入観も考えられます。

●自分に対する評価
攻撃的な態度をとらずにはいられない心理的背景には、自分に対する評価も関係しています。
自分の存在に対する評価(自己肯定感)が低く自信がない心理状態だったり、自身の能力に対する自己評価(自己効力感)も低いために自分を守らなければならない心理状態に陥っていたりすることがあります。

攻撃的な人が組織に及ぼす影響

どのような組織でも、攻撃的な態度をとる人がいることは少なくありません。攻撃的な人を放置すると、以下のような影響が生じる可能性があります。

  • 優秀な人材が退職する
  • 採用しても定着しない人材が多くなる
  • チームがまとまらなくなる
  • 人事関連の問題が解決されず、本来の業務に集中できなくなる
  • パワーハラスメントやモラルハラスメントに発展する

人材の入れ替わりが激しくなることで、既存社員の業務負担が増大することがあります。また、採用費用の増加により業績への負担も考えられます。問題のある社員に関する問題で、人事担当者が本来の業務に集中できなくなることもあります。チームがまとまらず、社員のメンタルヘルスの問題が増加することもあります。

敦子
問題が大きくなる前に、職場にいる攻撃的な人を放置せず、適切に対処することが必要です。

攻撃的な人の対処方法

「職場の攻撃的な人」に関わらなくてはならないとき、どのように対処すればよいか、わからない人も多いでしょう。ここからは、攻撃的な人への対処法を紹介します。

まず大事なことは、攻撃的な人の心理的な背景を知ることです。うまくやり取りができるようになる第一歩となります。

攻撃的な人は、相手との勝ち負けや防御、支配、承認の自己欲求を満たすためにふるまっています。攻撃的なコミュニケーションの意図で一番多く見受けられるのは「勝ち負け」です。意識的、無意識的問わず、相手に負けられない、勝たなければならない何かしらの意図があるのです。

攻撃的な人とは、以下のようなコミュニケーションを心がけましょう。

  • 何のためのコミュニケーションなのか、意図を明確にする
  • 結論と根拠を簡潔に説明できるように準備してから話す

こちらの話を遮られたり、相手が感情的になっていると感じられた際は、一旦会話を中断し、別のタイミングを設定しなおすことも大切です。

間接的な非言語コミュニケーションにも相手を知るヒントがたくさん隠れています。

  • 声のトーン
  • 表情
  • ボディランゲージ
  • 言葉
  • 身体の姿勢

これらを観察することで相手の防御、支配、承認の何を満たそうとしているのかを見極めることができます。また、観察者のスタンスをとることで、冷静になることもできます。

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ポイントは、相手が理解できるカタチで、受け入れやすい話し方を心掛けることです。

また、攻撃的な人をさらに増長させてしまう態度が問題の場合もあります。強いコミュニケーションの相手の態度を非主張的(受身的)な人が容認し、攻撃的な人に仕立て上げてしまうケースもあります。意見を主張することは、一方的に強すぎても弱すぎてもうまくいかないということです。

攻撃的な人に効果的な対処法「アサーティブコミュニケーション」

攻撃的な人に効果的な対処法として、「アサーティブコミュニケーション」があります。アサーティブコミュニケーションを導入することで、以下のような組織の変化が期待できます。

  • コミュニケーションの質が向上し、職場環境が改善される
  • チームワークが向上し、生産性が上がる
  • 社員のメンタルヘルスが改善される
  • 組織内のパワーハラスメントやモラルハラスメントの発生が減る
  • 職場におけるストレスが軽減される

アサーティブコミュニケーションは、相手と自分を尊重し、自己主張をすることを目的としています。このため、コミュニケーションの質が向上し、職場環境が改善されます。また、アサーティブコミュニケーションを実践することで、相手の意見を理解し、協力して解決策を見つけることができるため、チームワークが向上し、生産性が上がると期待されます。さらに、アサーティブコミュニケーションは、ストレスを軽減し、社員のメンタルヘルスを改善することができます。組織内のパワーハラスメントやモラルハラスメントの発生が減ることで、職場のストレスが軽減されます。

アサーティブコミュニケーションの特徴は、以下の通りです。

  • ものごとがうまくいかないとき、他責や環境や状況のせいにしない
  • 自己表現するときは、ネガティブな評価を恐れない
  • コミュニケーションで生じる自分の違和感を放置しない

アサーティブコミュニケーションは、一人ですぐにできる方法と、外部(他者)の力を借りてトレーニングしていく方法があります。まずは一人ですぐにできる方法を紹介しましょう。

  • 何を伝えるか5W1Hを明確にしてから話す
  • 事実と主観を整理する
  • 相手がどのように理解したかを確認する
  • 推測や憶測で判断せずに確認をする
  • 自分の勝手な価値観でジャッジしない(相手もOK、自分もOK)

次に、外部(他者)の力を借りてトレーニングすることです。

  • 防衛的(自分の立場を優位に保ちたい)、支配的(相手や場面を自分の思い通りに動かしたい)、受身的になっていないかを客観的に捉える自己観察を習得する
  • 理論や知識を学び、自己観察の質を高める
  • 客観的なフィードバックや問いを活用し、気づけていない視点を見出す。
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攻撃的な傾向は、誰もが持っているものです。問題行動に上手に対処するには、日ごろからコミュニケーションに注意を向けることが大切です。お互いが「アサーティブ」なコミュニケーションをとれるように、知識を共有しつつ、日々トレーニングを行っていきましょう。

まとめ

コミュニケーションは、一人一人の「自己表現」の集積です。しかし、一方的な「主張」やネガティブな「感情」で仲間が振り回されるのは不健全です。健全な心理状態でコミュニケーションがとれるように、日頃から理想の状態を言語化し、必要な知識の共有やトレーニングを行っていくことが大切です。

理想的な組織には、互いに尊重し、成果を出すために集中しあえる関係があります。良いコミュニケーションが円滑に行われるよう、適切なフィードバックやコミュニケーションスキルのトレーニングを行うことも必要です。さらに、メンタルヘルスに配慮し、ストレスマネジメントのための支援やカウンセリングサービスを提供することも有効です。

最後に、理想的な組織を実現するためには、組織のリーダーが重要な役割を果たします。リーダーは、組織の価値観を示し、メンバーの尊重、コミュニケーションの円滑化、目標設定や業務プロセスの改善など、組織の方向性を明確にすることが必要です。適切な指導力を発揮し、メンバー一人一人が自己表現しやすくなるようにサポートすることで、理想的な組織を実現していきましょう。

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執筆:鈴木敦子

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